福島県の浜通り南部に位置するいわき地区(人口34万8000人)では、巨大地震および津波に加えて福島第一原発事故の発生により、会員の多くが近県へ一時避難していました。
まず行ったことは、219名(当時)の全地区会員の安否確認でした。次に、いわき事務所の機能を復旧させ、会員間ネットワークをつなぐ動きを心がけました。中同協や本部事務局から日々配信されてくる各種経営支援情報を携帯メールなどで迅速に本人へ届けるとともに、日々寄せられる経営相談やお困りごとに対しては、地区役員や専門家会員につなぐことで即時に対応していきました。
国の助成金などを使った雇用維持の方法説明会などを継続的に開催しました。さらに、地区会員の元気な姿を取材し、e.doyuを通じて発信しました。また、震災3年目には、市川副理事長(当時)と一緒に全会員の企業訪問活動を行いました。会員一人ひとりの近況を伺い、励まし合う活動を強化しました。
震災後は特に、地域からの若年層の流失増への危機感が高まりました。いわき市を始め行政機関からの雇用に関する行事(求人要請・合同企業説明会・若年者への就業意識向上の事業等)の共催依頼が相次ぎ、1つ1つ丁寧に対応してきました。そうした信頼関係の構築の結果、いわき市中小企業・小規模企業振興条例制定に向けた有識者会議の委員に同友会役員が選出され、2016年3月の条例制定にも主体的に携わることができました。
震災当時219名だった会員数は、震災から5年を経て300名を達成することができました。未曾有の災害を経験したことで、会員企業1社1社も、そして同友会そのものも、自らの存在意義(何のために自社は存在し、どんなお役立ちをお客や地域へできるのか)を再認識させられました。この震災を通して、経営理念(復興理念)の再構築をはからずも迫られることとなりましたが、逆境に屈せず、これからも会員さんと共に“新しい時代”を見据えた会員企業1社1社の経営基盤づくりと、同友会及び地域づくりに取り組んでいきたいと思います。
福島同友会いわき事務所 所長 阿部 雄飛