【Part1】REES記録集 座談会
東日本大震災から5年が経ちました。いまだに被災した地域には大きな爪あとが残っています。中同協ではこの5年間の宮城・岩手・福島の取り組みを中心に震災記録集を発行する予定です。記録集のために行われた座談会の概要を数回にわたって連載します。
司会 広浜 泰久・中同協幹事長
メンバー
鋤柄 修・中同協会長
田村 滿・岩手同友会代表理事
佐藤 元一・宮城同友会代表理事
安孫子 健一・福島同友会前理事長
増子 勉・福島同友会 福島REES担当常任理事
瓜田 靖・中同協事務局
【福島同友会】安孫子健一氏
震災直後、中同協に被害状況などを報告、またe.doyuで第一報を会員企業に送信しました。
翌12日に福島第1原子力発電所1号機が水素爆発。3月14日には災害対策本部を設置し、原発事故の沈静化の見込みが立たない中での今後の対応について検討しました。
同友会として当面は事務局機能の早期復旧を図りながら、会員企業の被害状況の把握に全力をあげました。電話がかかりにくい中、インターネットがつながりやすいという教訓を生かして、e.doyuをそれまで一部会員のみに付与していたIDを全会員に発行し、e.doyu掲示板機能を使って、会員が双方に状況を発信・共有できるようしました。さらに原発事故により会社を離れそれぞれがバラバラに避難せざるを得なかった会員には携帯電話のメールアドレスを登録して、同友会の仲間としての絆をつなぎ続けました。
3月25日からはe.doyuに掲載した内容をコンパクトにA4サイズで1枚ものの手書き新聞にまとめ、震災復興ニュース「さすけねぇ福島 やるべ中小企業」として発行し、ホームページにもバックナンバーを掲載しました。メッセージや奮闘する会員の様子、助成金など緊急施策情報などを伝えました。地区単位でも独自の状況を伝える便りを発行し、情報を共有しておりました。
また、全国から支援いただいた義援金の一部を被害の甚大な方に直接お渡しすることができ、自分たちは同友会があって、仲間が全国にいるんだという強い思いを感じることができました。
原発事故の収束が見えない中で、5月18日福島同友会定期総会を開催、各地区でも地区総会が開催されました。
総会では「震災後、事務局からの情報発信や仲間同士の励まし合い、助け合いが支えとなった。同友会に入っていて良かったとしみじみ実感している」という声が発せられています。これは福島同友会の全会員の気持ちを代弁していると思います。
「同友会に入っていて良かったとしみじみ実感している」という声
東日本大震災発生から1年を直前にひかえた3月8~9日には福島県郡山市で第42回中小企業問題全国研究集会(全研)が開催されました。「震災1年、強い絆のもと、われら断じて滅びず」をテーマに全国47同友会から約1600名が参加しました。中小企業家の連帯で被災地の復興と日本の再生を実現しようと決意を固めあう2日間となりました。震災後1年、同友会理念の自主・民主・連帯を基本とした活動が十分にできましたし、理念が非常に強く身近に感じられました。
震災1年、強い絆のもと、われら断じて滅びず福島全研を開催
『逆境に立ち向かう企業家たち』を発刊
地震、津波、原発事故と歴史上類をみない三重苦を背負ってしまった福島同友会相双地区。震災当時のそれぞれの状況、その後も続くさまざまな苦難に翻弄される中での会員一人ひとりの思い、そして復興に向けてくじけずに奮闘する会員の姿を何とか形にしたいと東日本大震災記録集『逆境に立ち向かう企業家たち』を発刊しました。
この編集にあたり全国の事務局員の全面的な取材協力を得て、全国の同友会の絆の結晶の記録集といわれるものになりました。東日本大震災から2年を迎えるにあたり、2013年3月6日、第1回東日本大震災復興シンポジウムが福島市で開かれ、43同友会および中同協から234名の参加があり、その際無料配布しています。
震災・原発事故からの復旧・復興、そして同友会は最高会勢を更新中
原発事故は2011年3月12日、14日、15日と次々と3基の原子炉が爆発したわけですが、結果半径20キロメートル圏内の住民は強制的に避難させられた状況となりました。住民の避難とともに工業品、食料品をふくめた県内産品の出荷停止や取引停止という状況に陥っていました。また県内全域が非常に危険なところだと流布され、住んでいる方も健康不安を訴え、県民そのものの危険も発生しておりました。いわゆる風評被害が発生したのがこの間のことでした。
それでも各団体では、全生産品の放射能検査を実施しております。とくに食料品の放射能検査については、厳格な基準をきめ、ゼロでなければ出荷しないとの方針で県産品を出荷しています。かえって世界一安全な食料事情にあると自負しています。
除染も行われていますが、当初各自治体が率先して学校の汚染土を除去するということやっていましたが、これに国は反対していました。その後国も方針を転換し、やらざるを得ないだろうとなり、現在では継続的に除染をおこなっていますが、まだ終わっておりません。
原発事故において県内外に避難したわけですが、避難者は16万5000人に及びました。2015年1月7日段階では10万人を下回る状況となっています。
会員増強は、震災後も相双地区、いわき地区をはじめ会勢を増やしていまして、現在1800名を超え、最高会勢を更新しています。
長崎同友会さんより「社長さん、あなたの悩みは何ですか?」というPRキャッチコピーを公式に拝借し、新たに福島同友会案内・ポスターを作成し、「社長さん」の目に付くよう、県内銀行15行、約400支店の窓口に設置いただいています。今後も会員増強に取り組んでまいります。
【福島同友会】増子 勉 氏
福島「REES」の立ち上げへ
元気な企業はあげたらきりがありません。新しい仕事と雇用を生み出しています。行政と連携したり、グループ補助金を使用しての取り組みもあります。沿岸部では地元が水産物のシラスの加工工場を新しく立ち上げています。原発エリアから拠点を移して活躍している企業もたくさんあります。
震災から5年目の今年、震災対策本部を改め福島「REES」を立ち上げました。中同協「REES」の福島版として継続活動していきます。震災記録集第2弾の発行を準備しています。
なぜ福島「REES」を立ち上げたのかというと、災害対策本部がありましたが、あまり活動が行われなくなりました。福島ではやはり原発災害があります。福島同友会としても、中同協と同じ「REES」の活動として展開していくことが必要だと福島「REES」を立ち上げました。それを福島同友会の環境委員会、政策委員会、経営労働委員会で構成しますが、エネルギーシフト、中小企業振興基本条例、経営指針の活動などを通じて復興をめざす活動を展開しています。