今回は、経営指針実践企業の仲間の中で、特に「食」の分野で震災からの復興に活躍する会員企業3社を紹介します。
浜通り地方(南相馬市)の乳業メーカー松永牛乳(株)は、地震・津波・原発事故で甚大な被災を受けました。社長の井上さん(42歳)は、まず毎日のミーティングを強化。日々の生産活動に関する情報を共有し、下落した品質レベルを向上するため、震災前以上の品質レベルを確保することに全力投球。ホームページを開設して情報を発信、製品の安全性に関する情報を公開し、お客様自身が安全性を判断できるようにしました。
また、生産時間の見直しを実施、人員が不足する状況下で従業員が疲弊しないように利益と数量のバランスを調整しました。これらの取り組みにより、結果的に生産の効率と安定性は震災前よりも向上。今後は、新製品の開発や、食品の安全性に関する国際認証(FSSC22000)を取得し、食品の安全性を客観的に示すことで従業員の誇り、ひいては地域の誇りを取り戻したいと語ります。
中通り地方(須賀川市)で食のブランド事業を展開する(株)ワタスイの渡辺社長(44歳)は、原発事故による風評被害に対し福島の食を何とかしたいという強い使命感に燃え、「福島の食を復興する」「福島を食で復興する」という2つの想いをもって「F2R事業」(Fukushima Foods Revival事業)を展開します。農産物の「廃棄ロスを軽減」し、乾燥などの「加工による再活用」、そして「添加物を最小限にする」をコンセプトに誕生したドライフルーツ「七果(ななか)」は、復興庁が主催する「世界に通用する究極のお土産」の最終選考10品に選ばれました。
全国的にも有名な観光地会津では、観光地の卸先の約90%が店を閉める事態が起きました。ホテルは被災者の方たちの避難場所となり、ホテルの売店の商品や、工場ストップによる「賞味期限切れ」の商品が続出しました。喜多方市の地元農産物土産食品メーカー(株)おくやの松崎社長(40歳)は、それらの商品をトラック一杯に詰め込み西日本や関東圏の道の駅や商店街へ販売に行きました。そして、帰りにはトラック一杯の支援物資を積んで帰り被災者に配布するという活動を2年間、毎週末に繰り返しました。人の温かさと、会津観光という資源のありがたさをしみじみ感じたと語ります。修学旅行や体験学習など学生旅行者の戻りは全盛期までは行きませんが、NHKの「八重の桜」や福島DC(ディスティネーションキャンペーン)、福島PR隊などの活動により、会津の観光客は徐々に戻って来ています。
福島同友会経営労働委員長 (有)南進測量代表取締役 樋山 秀樹