福島市中小企業振興基本条例が制定
東日本大震災および東京電力福島第一原発の事故が起きてまる5年が過ぎようとしています。今もなお多くの人々が応急仮設住宅に住んでおり、福島県の人口は震災前の203万人から194万人にまでに減少しています。
そんな中、同友会では県内各地で市町村の首長との懇談会を開催しながら、地元中小企業の経営再建を通して県民に安心、安全、安定して働ける雇用の場を確保し、いかに地域の再生を図っていくかについて真剣な話し合いが続けられています。
福島県においては、10年前の2006年に福島県中小企業振興基本条例(「県」条例)が施行されました。東日本大震災以降、その内容は大幅に改正、追加され、また各市長村においても中小企業振興基本条例制定への気運が急速に高まってきています。震災以降に行われた郡山市、いわき市、福島市の首長選挙では現役の首長が軒並み敗退し、中小企業振興基本条例を選挙公約に掲げた新人の市長が誕生しました。
中でも福島市においては、市の行政当局の呼びかけにより、同友会、商工会議所、商工会など経済団体との条例制定の勉強会が複数回持たれ、急速にその準備が進展しました。結果、昨年12月の定例市議会において「福島市中小企業振興基本条例」が原案通り可決され、12月25日付けをもって交付されました。「市・町・村」条例としては福島県内59市町村で初めて、東北6県では12番目の条例制定となります。
今回の福島市中小企業振興基本条例制定は、下記の点で大きな意義があるものと考えています。
1、昨年来、同友会をはじめ商工会議所、商工会、ほか5中小企業団体と福島市の行政当局による条例制定への勉強会活動を地道に進めたこと。
2、前文と第1条の目的の中に、中小企業憲章の理念に基づく福島市における中小企業の役割、重要性がしっかり謳われたこと。
3、中小企業振興の具体化策として、同友会がかねてから主張していた職場体験やインターンシップの実施、中小企業経営者、中小企業団体代表者、学識経験者からなる中小企業振興会議の設置などが盛り込まれたこと。
4、1986年交付の(旧)福島市中小企業振興条例は廃止され、「見直し条例」「書き換え条例」として本条例が交付されたことで、市の中小企業振興への基本認識を改めさせたこと。
5、第3条の基本理念の中に、「東日本大震災の被害および影響を克服するための不断の取り組みを推進する」と明記され、本条例が震災からの「復興再生指針」として市の施策の中に明確に位置付けられたこと。福島市に続き、直接被災地のいわき市においても「いわき市中小企業振興基本条例」が2月定例義会において原案通り可決される予定となっています。
福島同友会政策提言委員長 (株)カンノ住研代表取締役 菅野 良二