(株)いんふぉ.代表取締役 野口 美佐子氏
東日本大震災前は大熊町に本社を構え、浜通り地区の生活情報を紹介する月刊フリーペーパー「いんふぉ.(info)」を発刊(2万5000部)していた野口さん。震災直後に発生した原発事故後、わずか3カ月休刊しただけで活動再開(復刊)を成し遂げました。今回は南相馬営業所を訪問して、野口さんにお話を伺いました。
失った地域コミュニティーに寄り添う
震災直後に発生した原発事故のため、スタッフが県外へ避難してしまい休刊を余儀なくされました。以前の商圏に住んでいた方々も皆、県内各地へ離散しました。 野口さんの行動は素早く、まず郡山で仮オフィスの契約をすると、まだ震災から2週間しか経っていない時期に、第1原発から5キロメートル圏内の事務所に入り、必要機材を持ち出しました。地域密着型情報誌の責務として、失った地域コミュニティーに寄り添うべく、県内ヨークベニマル各店舗(約70店)に「いんふぉ.」を設置しました。設置するやいなや、ハガキやメールで「今、自分は○○に避難していますが、故郷を思い出し、家族で涙しながら読みました」等々の大きな反響があったそうです。
創業時の思いに立ちかえる
7月で12年目を迎える同社は、創業して丸11年が経過しました。2001年9月11日に起きたニューヨーク同時多発テロで被災し、故郷大熊町に家族と戻った時に感じたことは、日々の生活に情報がないということでした。 身近な情報を持ち寄ってシェアするビジネスモデルを、地域へ普及・確立するために奮闘してきました。フリーペーパーへの理解と浸透が広まるまでは3年かかったそうです。「現在は、創業当時の一から積み上げてきた作業にもどる感覚です」と野口さん。 現在、地域への取材をとおして新しい人材の流入を感じています。以前からいる人が、地域再興にあきらめムードの中、外部からこちらに根付いてくれた方々が起業やさまざまな活動で活力をもたらしてくれる事例が多く寄せられています。「いんふぉ.」の発行部数は、従前の9割程度まで戻ってきました。
「いんふぉ.」を進化させる
「紙媒体に付加価値をつけていきたいです」と野口さん。県内でも例が少なく相双地区では初めての印刷物とデジタルを融合させたAR(※)企画制作事業を導入することで、地域情報発信は勿論のこと、行政や企業そして個人に至るまで幅広いニーズに対応、可能性を追及していくそうです。[※AR(拡張現実)=印刷物、看板などから動画や音声が再生され現実世界を拡張する] SNSなども活用しながら、時にはラインで方言スタンプ(相双弁、福島弁)づくりを手掛けたりと遊び心を忘れずに、「今、共に働くスタッフとアイデアを進化させていきたい」「地域に元気が戻ってくるように、現状を外部へ発信していきたい」と、はつらつと語る野口さんが印象的でした。
『同友ふくしま』2015年2月号より転載
「中小企業家しんぶん」 2015年 4月 25日号より
震災直後に発生した原発事故のため、スタッフが県外へ避難してしまい休刊を余儀なくされました。以前の商圏に住んでいた方々も皆、県内各地へ離散しました。 野口さんの行動は素早く、まず郡山で仮オフィスの契約をすると、まだ震災から2週間しか経っていない時期に、第1原発から5キロメートル圏内の事務所に入り、必要機材を持ち出しました。地域密着型情報誌の責務として、失った地域コミュニティーに寄り添うべく、県内ヨークベニマル各店舗(約70店)に「いんふぉ.」を設置しました。設置するやいなや、ハガキやメールで「今、自分は○○に避難していますが、故郷を思い出し、家族で涙しながら読みました」等々の大きな反響があったそうです。