(株)イベント・トゥエンティ・ワン 代表取締役社長 中野 愛一郎(奈良)
3月29日、中同協青年部連絡会正副代表会議が福島県郡山市で開かれ、翌30日、参加者は南相馬市と浪江町を視察しました。中野愛一郎氏((株)イベント・トゥエンティ・ワン代表取締役社長/奈良同友会青年部幹事長)のレポートを紹介します。
南相馬市と浪江町の一部は、今も立ち入りが制限されていますが、今回は、福島同友会のメンバーが住民という事で特別に許可を得て視察することができました。
通常は0・15マイクロシーベルト程度のところ、検問を通過したあたりから急激に放射線量が上昇し、一時期9・10マイクロシーベルトまで上がりました。バスは原発の6キロメートル付近まで近づきました。測定装置が表示するリアルすぎる数値が、見えない放射能の恐怖として感じられます。
まるでゴーストタウン
浪江町はゴーストタウンと化していました。まるで町全体が映画のセットのようで、誰もいません。倒壊したままの家屋。信号は全部黄色の点滅。田んぼは草がボーボーに生えていて、その中には車や船がひっくり返って落ちています。
請戸(うけど)小学校に入ると、体育館は卒業式の準備で時が止まっていました。体育館の床が陥没。教室の天井はむき出しになり、落ちています。黒板にはみんなの想(おも)いが本当に一面に埋まっていました。読んでいて泣きそうになります。教室の床には授業で使っていたと思われるプリントが散乱していて、楽しいはずの運動会の写真が泥にまみれていました。
胸を打つ経営者の覚悟
福島同友会の会員の方から3・11当時の状況を聞きました。地震があって外に逃げ出すと横殴りの吹雪。この世の終わりみたいだったとのこと。みんな話をしていて、どうしても涙が出てきます。
福島の会員さんの話からは、家族にもう会えないかもしれない、それでも会社を守るという経営者としての覚悟。会社が潰れてもいい、それでも雇用を確保するという覚悟が伝わり、ものすごく胸を打たれました。 そして「同じ日本人として、共に歩みたい」と強く感じました。
青年経営者としての責任
「でもどうやって?」。子どもたちの笑い声が消えてしまった小学校で、そのことを考えました。結論は、僕が見たことを伝え続けること。そして今、目の前の社業を一生懸命頑張って、福島をもっともっと助けられる力を持つ企業になること。日本を元気にすること。それが子どもたちに夢を与えられることにもつながるから。それが今を生きる青年経営者としての責任だと思いました。
厳しい状況の中、福島の皆さんが頑張って前を向いて生きている姿にも接することができました。今でも思い出すと涙が出ます。それを聞いて周りのみんなも涙を流します。それでも前を向いて生きていこうとしている福島の強さを、僕たちはどう感じ、どう返していけるのか。
今回、大変貴重な時間を仲間たちと共有することができました。震災から3年後の福島。来て良かった。見ることができて良かった。私もがんばります。ありがとうございました。
「中小企業家しんぶん」 2014年 5月 5日号より