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復興に多くの課題~宮城沿岸部を視察―中同協・REES「政策課題を議論するグループ」

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 10月1~2日、中同協東日本大震災復興推進本部研究グループ「REES」の「復興への政策課題を議論するグループ」会議が仙台市で開催され、16名が参加しました。2日目には仙台市や名取市の沿岸部を訪問し、復興の現状などを視察しました。

 1日目の冒頭、グループリーダーの佐藤元一氏(宮城同友会代表理事)が「被災地の現在の姿を見ていただき、復興に知恵と力をいただきたい」とあいさつ。福島・岩手・宮城の3同友会からは「復興政策に関わる3県の対自治体活動及び地域再生・活性化活動」についてそれぞれ報告があり、経験交流が行われました。
 続いて福島大学うつくしま未来支援センター・地域復興支援部門長の丹波史紀准教授が「大震災から2年半、福島の現状と課題は何か~地域復興の担い手、中小企業への期待~」のテーマで報告しました。丹波氏は震災や原発事故で地域文化・コミュニティーが奪われ、いまなお16万人が避難している福島の現状を紹介しながら、福島大学が取り組んでいる復興支援の活動などについて報告。
 「持続的な復興を進めるうえで不可欠なのは、被災地のニーズをつかみ企業の本業として、地域の課題を解決するビジネスに取り組むこと」と中小企業への期待を熱く語りました。

沿岸部を視察

 2日目は、仙台市・名取市を視察。
「震災の語り部(べ)タクシー」を運営する仙台中央タクシー(株)(神田稔専務取締役、宮城同友会会員)のマイクロバスで神田氏から震災当日の状況などの説明を受けながら、沿岸部を中心に視察しました。

写真1

写真1:仙台市若林区荒浜地区。住宅が密集していたこの地区に10メートルを超える津波が襲い、多くの方がなくなった。写真中央の荒浜小学校には多くの方が避難した。

 仙台市・名取市の沿岸部は、津波で大きな被害を受けたところ。現在、瓦礫(がれき)の撤去などは終了しましたが、建物などはほとんどなく、雑草が茂り荒涼とした更地が遠くまで広がっています(写真1)。

写真2

写真2:かさ上げの計画などを説明したパネルを前に名取市職員(相沢氏)から聞く参加者。

 津波で壊滅的な被害を受けた名取市閖上(ゆりあげ)地区では、名取市震災復興部企画員兼復興まちづくり課主幹の相沢幸也氏らから説明を受けました(写真2)。

写真3

写真3:実際のかさ上げの高さを示す「現地確認場」。

 この地区では現在、海抜から5メートルのかさ上げが計画されています。かさ上げした際の宅地を実感してもらうために、実際の高さまでかさ上げをした「現地確認場」も見学(写真3)。

写真4

写真4:日和山は高さ約6メートル。この地域には焼く8メートルの津波が押し寄せた。

 見上げるような高さのかさ上げが計画されている沿岸部では、復興に向けてまだまだ多くの課題があることが伺われました。閖上地区の日和山(ひよりやま)ではボランティアで語り部の活動をしている長沼俊幸氏(ナガヌマ住設代表)から震災当日の話を聞きました(写真4)。
 長沼氏は同地区に住んでいましたが、震災当日は津波に襲われ、自宅の屋根に避難。そのまま家が約3キロメートル離れた場所まで夫人と流され、翌日夕方に救助されます。
 名取市では震災で1000名を超える方が亡くなっていますが、その多くは同地区の方とのこと。
 長沼氏は「震災前、『この地域には津波は来ない』と言われていましたが、震災後記録を調べてみたら約80年前に津波が来ていたことがわかりました。自然災害の恐ろしさをきちんと伝えていくことの大切さを痛感しています」と語りました。なお今回の視察には宮城同友会から鍋島孝敏代表理事はじめ5名の役員・事務局も同行しました。

「中小企業家しんぶん」 2013年 10月 25日号より

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