ニュース - シリーズ【復興-我われが牽引する】

会員企業の取り組み紹介

  東日本大震災の被災地には、震災からの復興に向けて奮闘する多くの会員企業の姿があります。今回は、BCP(緊急時事業継続計画)の策定で、いち早く事業活動を再開した熊谷燃料住設(株)(熊谷敏明代表取締役、宮城同友会会員)、地域のニーズに応えて放射線測定器の基幹となるガイガーミューラー管を開発した(株)三和製作所(齋藤雄一郎社長、福島同友会会員)の取り組みを紹介します。

 

非常時の決断と経営者の果たすべき使命~BCPの策定で地域を守る

熊谷燃料住設(株) 代表取締役 熊谷敏明氏(宮城)

 熊谷社長がBCP(business continuity plan=緊急時事業継続計画)を完成させたのは2009年7月のこと。以前から、災害対応マニュアルを作成していましたが、2003年5月の三陸南地震や2008年6月の岩手・宮城内陸地震などの大きな地震のたびに見直しをはかる程度でした。

 しかし2008年11月、所属する地域団体で阪神大震災の経験に学び「もし家族が亡くなったら? 社員が亡くなったら?」という視点で考えることの大切さを実感します。自社の既存の災害マニュアルは、会社や社員とその家族がみな日常通りにあるということが前提で、このままでは近い将来確実にやってくるといわれている宮城県沖地震には機能しないと判断した熊谷社長は、県商工支援課で実施していた中小企業へのBCP専門家派遣事業に応募し、計画を策定することとなりました。

 BCPの策定は、緊急時(自然災害、大火災、テロなど)に優先して継続・復旧すべき中核事業を選ぶことから始まります。熊谷燃料住設(株)では「LPガスの供給事業」が最も重要な事業であると位置づけています。これによって緊急時に自分たちがやるべきことが明確になったことに加え、大きな地震がなくとも、年1度は社内全体で必ず見直すという取り組みが行われるようになりました。

 そんな中での3月11日の大震災発生。熊谷社長は「常にシミュレーションを行って緊急時の役割を明確にしていたため、社員一人ひとりが事前に決められた計画をもとに滞りなく動くことができた」と語ります。地震発生時には全社員がすぐに会社に戻り、安全点検のためお客様を訪問しました。3日間で主要箇所の確認は完了し、順次復旧作業を行いました。道路の渋滞には防災倉庫に備えてあった自転車3台が移動手段として活躍し、停電にはLPG発電機を使用した無線機が社員間の連絡手段として大きな役割を果たしました。防災倉庫には飲料水、投光機、非常食、石油ストーブなども備え、倉庫隣にある30トンのタンクには生活用水も確保しており、社員やその家族、地域の皆さんを支えました。こうした甲斐あって、多くのお客様から「素早く対応してくれて本当に助かりました」と感謝の言葉が寄せられました。また今回課題となった部分については、早速見直しをはかっているそうです。

 「緊急時」の位置づけは、業界、業態、業務内容により違いはありますが、近年社会を騒がせている新型インフルエンザや食中毒などの問題もまた「緊急時」の一例です。突然発生する緊急事態に有効な手を打つことができなければ、廃業に追い込まれることや、事業縮小のために従業員を解雇しなければならない状況も考えられるでしょう。「BCPも保険の1つ。自分自身で自社を守らなければ誰も守ってはくれない」と熊谷社長。取材を通じて、危機管理のあり方や、たとえ緊急時であっても企業を存続させることに対する経営者としての強い使命感を学ぶことができました。

取材/サウンドアリーナ 太田義則(宮城)

(Do you MIYAGI 243号より)

会社概要

設立 1972年
事業内容 LPガス販売、灯油・住設商品・飲料水販売
従業員数 20名
所在地 宮城県登米市迫町左沼
URL http://www.kumanen.jp

*BCP(緊急時事業継続計画)
企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと。

 

原発被害の大きな福島から~放射線測定のGM(ガイガーミューラー)管と測定器を開発・販売へ!

(株)三和製作所 代表取締役 齋藤雄一郎氏(福島)

 (株)三和製作所(齋藤雄一郎社長、福島同友会会員)では、ガイガーミューラー管(以下GM管)の製造技術を開発し生産を開始し、放射線測定器を販売することになりました。

 原発事故の影響により急激にその需要が高まった放射線測定器。その基幹となり放射線を測定する部品であるGM管は国内での製造がほとんど無く、精度の高い放射線測定器の価格は10万円前後と入手しづらい状況が続いています。

 そんな中、特に放射線の測定に関してニーズの高い福島県にある同社では、地元ブランドでのGM管製造をめざし7月から開発に着手。内部に充填するガスの混合割合について茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構から指導を受けるなどして、この10月から1日200本程度の生産を開始しました。

 また、このGM管を使った測定器の販売も10月から開始する予定。単体での測定器が1万8800円、スマートフォン取付けタイプの測定器で1万2800円程度と、内製化によって従来よりも安価での供給ができる見込みです。

 この製品の組み立てや加工などは福島県内の企業に依頼するなど、純「福島産」の測定器として生産することになっています。

 齋藤社長は「今、地域の皆さんが必要としているモノを自分たちの力で創り、広く発信していきたい」と意気込みを語ります。

 今後はさらにGM管の感度を上げて食品の放射線量を測定する機器の開発や、太陽光発電を利用した放射線監視装置の開発なども計画中です。問い合わせはTEL0243―48―4222まで。

会社概要

設立 1971年
事業内容 精密鈑金加工・LED照明・什器
従業員数 12名(パート4名含む)
所在地 福島県安達郡大玉村
URL http://www.3wa-corp.jp 

「中小企業家しんぶん」 2011年 10月 15日号より

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