ニュース - シリーズ【復興-我われが牽引する】

第6回中小企業地球環境問題交流会記念講演講師畠山重篤氏を訪ねて

【寄稿】森は海の恋人~震災復興にむけて

 第6回中小企業地球環境問題交流会が11月25~26日に香川同友会の設営で開催されます。(有)アドバンスカンパニー浮田幸治氏より、記念講演講師であるNPO法人「森は海の恋人」代表の畠山重篤氏を訪ねた寄稿文と野田勝利実行委員長のあいさつを紹介します。

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 6月26日香川同友会野田代表理事、林副代表理事と私(浮田)は、大量の手荷物をもって、1路、仙台空港へ行きました。大量の手荷物とは、食事や寝る所がないとのことなので、インスタント食品、つまみ、飲物などを山盛りに用意し、寝袋も持参し、本当に大変な荷物になりました。

 

飛行機から見た津波被害と被災地の様子

 飛行機も実際は臨時便で、本数もかなり少ないためほぼ満席状態でした。伊丹空港から飛び立って約1時間15分、眼に飛び込んできた光景は木が所どころに生えた状態の田んぼのような状態が広範囲に広がっている光景でした。

 その原因は津波のせいだとすぐにわかるような悲惨な状況でした。そして飛行機は滑走路へ着陸。バスで乗客をゲートまでピストン輸送し、建物に入るとプレハブ小屋のような状態でした。手荷物受取のコンベアーはかろうじて復旧されていましたが、食事するところや売店などは何も営業していない状態でした。テレビ等で何度も何度も見ていましたが、そんな規模の状態でないことがすぐに感じ取れる状況でした。小雨降る中レンタカーを借り、とりあえず仙台市内で宿泊し、翌日も雨で、早朝石巻に向け出発しました。高速道を降り石巻市へ向かいましたがあまりの渋滞で断念し、とにかくボランティア場所の気仙沼に向かって移動しようということになりました。

 南三陸町、気仙沼市と移動していくとテレビで見慣れた悲惨な光景が広がっていました。テレビと違うところは、ほこり、匂い、渋滞、そしてとてつもなく広大な被災場所でした。あまりにひどい現状に無口になってしまいました。12時40分過ぎに気仙沼港付近を通り過ぎ、おおよそ15分程行くとかろうじて通行できるだけの道の先に穏やかな湾が広がりました。ここが、畠山さんが牡蠣の養殖をしている所、水山養殖場でした。

 

畠山さんとの出会い

 水山養殖場に到着すると畠山重篤さんのご長男の耕さんが私たちを迎えてくれました。すぐに、坂の上からジャージに長靴姿の畠山さんが歩いて降りてきて、「ようこそ遠い所を、まあ上にどうぞ」と声をかけてくださいました。全く気取らないその容姿と愛嬌のある笑顔の畠山さんを見て、内心ホッとしました。

 長い上り坂を歩きながら、このあたりは55軒ほどの建物がありましたが、今回の津波で5~6軒しか残らなかったこと、実のお母様を亡くされたこと、資料や大切な本など畠山さんの仕事場だった事務所が流されてしまったこと、そして坂の頂上まで登ってきた私たちにここまで海水が来たことを教えてくださいました。

そして、庭に作った大きな波板の屋根の下で、「お茶でも飲みながらゆっくりしてください」といって畠山さんが、先日、香川に来ていた話、秋篠宮文仁親王殿下、紀子妃殿下と接見されたこと、フランスの牡蠣が50年ほど前に絶滅してしまい気仙沼から種付けに行き見事復活させたこと、日本中に牡蠣つながりの知人がいることなど他にもたくさんのことをあいさつ代わりとばかりに私たちにお話をしてくれました。

 

山と海と復興のつながり

 なかでも驚いたのは、畠山さんが杉の材木を持ち出し、間伐材を半分にしてログハウスみたいに組み立てられるように加工を施し、燻煙(くんえん)処理をすることで、5日間乾燥することで曲がったり反ったりせず丈夫でシロアリも来ない製品になると説明をしたことです。私は工務店をしているため、環境に良い商材やあまり知られていない優れた材料などを調べています。もちろん燻煙処理の木材のことも知っていましたが、しかし畠山さんから燻煙材の話を聞かされたのは驚きでした。

 東日本では今後、10万棟の住宅を建設しなければならないとのことです。この材料を、輸入材でまかなうのか、地元の木を間伐して燻煙を施し、すべての住宅に充てるのかで大きく変わってくると畠山さんはいっていました。今後建設するときに、今までのように海の近くではなく、山を切り開かなければ宅地は造れない可能性があります。そうなれば、多くの木を切る必要があり、伐採した木を使わないといけません。また、木を間伐していけば、結果的に山に下草が茂り木々が生き返りたくさんの腐葉土を造り川が生き返ります。それによって海が潤っていきます。また雇用も生まれ、すべてに良い循環だと力説されました。

 

人の心に木を植える

 翌朝も畠山さんは貴重な話をしていただきました。「森は海の恋人」植樹祭は23年になります。子どもたちを植樹祭に呼んで体験してもらい、その数は年間約500人、23年間で累計1万人以上の子どもたちが植樹祭にかかわっています。 10歳だった子どもはもう30過ぎになり、この子どもたちから学者も誕生してきています。「教育は重要です。私たちは山に木を植えながら、人の心にも木を植えてきました」と笑いながら語られていました。

 

筏(いかだ)作りから牡蠣の種付けへ

 畠山さんは燻煙材を使ったモデルハウスを建て、復興につながるよう働きかけを行っています。行政は「牡蠣の種付けを待て」とのお話しもありますが、「今の時期に牡蠣の種付けをしないと手遅れになる」と、ほとんど流されてしまった筏作りから牡蠣の種付けを、ご自身の力だけで再生に向け活動を始められています。

 私たちは筏作りや牡蠣の種はさみを教わり、ボートに乗って筏に吊り下げるまで1日ボランティアさせていただきました。畠山さんの牡蠣に対する今までとは違った熱い想(おも)いを感じました。畠山さんにはまだまだ書ききれないほどの興味深いお話をいただきましたが、あとは11月25~26日に開催される第6回中小企業地球環境問題交流会の記念講演までお楽しみに!

(有)アドバンスカンパニー 浮田 幸治 

「中小企業家しんぶん」 2011年 9月 5日号より

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