岩手・大船渡市の水産加工業の会員からお話を聞かせてもらいましたが、調査船によると今年の秋サンマは豊漁と予想されていて、9月の水揚げに間に合うように工場の再建に着手しているとのことでした。しかし、放射能の影響を心配されていました。なぜかというと、魚の含有セシウムはこれまで測定していませんでしたので、今回、測定したとしても単純な比較ができません。仮に、マスコミがそのことについて取り上げたとすると、サンマの水揚げに大きな悪影響になる可能性があります。
11月には秋サケの水揚げもあります。しかし、今のところオホーツク海のマスとサケが不漁です。また、サケは河の匂いを頼りに遡上する性質をもっていますが、このたびの津波で河の匂いが変わってしまって遡上してこないのではないかと心配していました。三陸海岸の養殖や沿岸漁業は当分再開できないこともあり、今年は近海のサンマやサケが水揚げされるかどうかがカギであると話されていました。
今回、調査してよく理解できたことは、漁港だけ復興しても、それを出荷するためには製氷業者、加工業者がセットで復興していないと意味がないということです。いわゆる地域経済循環まるごとの復興がされないとダメなのだとわかりました。漁船団は製氷業者、加工業者が機能していない地域には水揚げせず、北海道などの他の地域に水揚げすることになり、そうすると三陸海岸の諸都市は主要な収入源が断たれる深刻な事態に陥ります。だから地元の水産加工業者さんは懸命に工場再建に奔走しています。岩手・陸前高田の会員さんはこれまで経営していたガソリンスタンドを業種転換して製氷業を始めました。これも地域経済循環を守ることが主旨です。こうして同友会会員をはじめ水産加工業者が工場再建に向かっていますが、二重債務問題が立ちはだかっています。
水産加工業経営者の声
この会員さんは次のように話しました。
工場再建費用の資金手当を切望していますが、政府の補助金は当初の4分の1にとどまっていて、さらに二重債務問題が立ちはだかっています。金融機関は「既存の借入どうする?」と貸し渋りがみられます。政府系でも政策公庫の融資は中々決まらず、信用保証協会はゼロ回答でした。それどころか、国が出すといっているガレキ除去費用についても4月末に請求していますが、いまだに支給されていません。社屋を片づけるのにかかった1300万円の撤去費用は個人の貯金から出さざるを得ませんでした。事業再開のための運転資金については、魚市場から1日1000万円(5日後決済)を買入していましたが、その実績からもわかるように巨額の運転資金が必要となります。その点でも二重債務問題の解決を切望しています。(次号に続く)
「中小企業家しんぶん」 2011年 8月 25日号より