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【宮城同友会】南三陸支部が震災後初の理事会を開催

理事会の様子

理事会の様子

 6月14日(水)、南三陸支部にて震災後初となる理事会が入谷公民館にて開催されました。

 南三陸町は人口約1万7000人ですが、今回の震災で死者541人、行方不明者664人、家屋全壊3,167棟、家屋半壊144棟(6/14現在)と甚大な被害を受けました。半年後には、人口は約半分まで落ち込むと言われています。

 理事会の冒頭で、鍋島孝敏代表理事から支部に対しての現時点で決まった支援について説明があり、「県としてみなさんに対して何ができるのか?を考え実行していきたい。そのためにもみなさんの生の声を聴くことが重要だと考えている。大変な状況の中でこのような場をつくっていただいたことに感謝します。」と挨拶。五十嵐弘人代表理事からの「今回の定時総会で代表理事をお受けすることになった。責任の重さを痛感しているが、若干ふっくらした顔と体つきのみなさんを見て安心した(笑)」との声に、参加した支部理事のみなさんからも思わず笑いが起きました。
 また、同じ沿岸地域で被害を受けた大橋清勝石巻支部長からは、「地域の被害は甚大だが一緒に力を合わせて復興していきたい。南三陸支部のみなさんの団結力に敬意を表したい。」と熱いメッセージが送られ、同友会バッジが山内正文南三陸支部長に手渡されました。

 集まった支部理事から震災から今までの取り組みについて報告がありましたので抜粋して掲載します。

・複数のグループ企業のうち生コン工場は津波による浸水があったが7月からは出荷再開予定。町内にある建物のうち数少ない残った一つである結婚式場では、震災時いらっしゃった327名のお客様すべてが無事だった。
 同友会で学び、来たる震災に備えて毛布や乾パンや水を保管していたので震災後しばらくの間はしのぐことができた。雪の降るなかトラックで物資を運んでくれた秋田同友会湯沢地区の方々をはじめ、多くの同友会の仲間に救われたことに心から感謝したい。涙が止まらなかった。社員も「同友会に入っていて本当に良かったですね!」と語ってくれている。今回の震災で「お金持ちである」とか「いい車に乗っている」ということが必ずしも大切なことではないと実感した。人生観が変わったと思う。
(生コンクリート製造販売・鉄工業・土木建設業・運輸業・結婚式場など)

・自宅と店舗ともに流されてなくなった。ラジオの報道で「灯油がない」「ガソリンがない」という悲痛な声を聞き、「何とかしたい」と無事だった車両で集落へ灯油を届けてまわった。町の災害対策本部に出入りし、燃料の手配と配送に尽力した。
 現在はガソリンスタンドを営業再開している。山の中の集落へ灯油を届けた社員は、伺った先の人たちから「あんたは神様だ!」と涙ながらに感謝されたらしく、社員も大変感激していた。エネルギーの大切さと私たちが携わっている仕事の使命を再認識した。
(石油製品・ガス販売、住宅機器・ギフト販売)

・震災時たまたま社員と家族全員が会社と隣接する自宅にいたため、すぐに避難した。私は一度会社に戻って見回りをしていたが、外に出たらサァーと風がよぎった瞬間に「バリバリッ」という音とともに押し寄せる波が見えて、慌てて裏山によじ登って間一髪助かった。数秒で目の前の会社と自宅が流されていった。
 「建物はなくなったが会社が生きていることを発信しなければ」と思い 、仙台営業所を同友会の仲間の会社の一角を借りて開設。今は取引先の協力もあって、自社製品でないが商品提供を徐々に行っている。社員一同を集め、辛かったが「一時解雇」とともに「一家の大黒柱として生活を支えていかなくてはいけない皆さんに、これからよい縁があって働く場ができたとしても私は裏切ったなどとは思わないから安心してくれ。年内の操業再開を目指すから、その時にはみなさんを再雇用する」と伝えた。事情により地域を離れた1名を除き、他全員は操業再開を待ってくれている。
 何もかも失い大変な状況ではあるが、毎日新しい発見がありワクワクしている自分もいる。なぜなら今までにない新しいことを生 み出せる可能性を感じているからだ。
(木材製材・販売、建築資材販売)

・一部の車両とお墓以外は全て流されてなくなった。避難した小学校では山内支部長と共に「炊事班長」として避難してきた850名分の食事の準備に追われた。地元の水産関係の会社から多くの水産物が提供された。社員は悩んだ末「一時解雇」したが、「年内操業再開と再雇用」を宣言した。
 仲間とともに4月に第一弾を開催した「福興市」から、現在は「年末に向けて仮説の商店街をわれわれの手でつくろう」という声があがっている。同友会の仲間が所有する土地に中小機構の支援を得て、共同の社屋を建てようと取り組んでいる。自社としても移動販売車で地域の方々に小売りを行なっていく。
(水産加工業)

・明治三陸地震津波を経験している先祖が高台に会社と自宅を構えてくれていたため助かった。震災後しばらくして、地元の生産者から「一日でも早く海を再生させるためにまずはワカメから育てようと思う。あなたも早く操業再開してお客様をつないでおいてくれ」と言われ、頼もしく思った。
 現在は、八戸の仲間の協力を得て操業再開している。同友会で学んでいたから「こちらから一方的に社員を解雇することはできない」という想いがあった。結果的には社員各自のさまざまな事情もあって、20名が自主退職し、現在は約60名で働いている。もし同友会で学んでいなければ、以前の自分なら機械的にバサッと解雇していたかもしれない。われわれ地元の中小企業経営者が頑張らなければ南三陸町の復興はない。素晴らしい町に再生できるように頑張っていきたい。
(水産加工業)

 山内正文南三陸支部長(左)と大橋清勝石巻支部長(右) 

山内正文南三陸支部長(左)と大橋清勝石巻支部長(右)

 山内支部長は、「わが社も悩みぬいた末に社員に操業再開と再雇用を誓った。『福興市』を震災間もない4月に開催したのは、一日でも早く地元住民の方々や外部の方々に『南三陸町を復興させる!』という意思表示をしたかったからだ。今まで積み重ねてきた同友会の学びは、今回の震災で見事に表れた。多くの同友会の仲間がいたるところでリーダーとして活躍していたのを見てとても嬉しく誇らしく思った。ぜひ、この同友会を絶やすことなく今後もみなさんんと共に頑張っていきたい」と語りました。

 今後は、南三陸町でも本格的な復興に向けて「復興会議」などが組織されることが予想されます。南三陸支部としても「われわれがそうした会議に積極的に参加し、企業と地域の復興に主体的に関わっていこう!」という認識で一致しています。この取り組みを今こそ「中小企業憲章」を活かした「中小企業(地域)振興基本条例」の制定に繋げていきたいと強く思いました。

(文:宮城同友会 事務局長 伊東氏)

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