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【特集】未然の災害に備え防止するBCP(事業継続計画)の実践

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 9月1日は防災の日と定められています。今年3月に行われた中同協・東日本大震災復興視察ツアーで岡田知弘・京都大学教授が「災害の時代に入り、まだ災害が起こっていない『未被災地』として対応することが全国に共通する課題と報告したように、各地で地震や豪雨被害などが続いています。中小企業庁では未然の災害に備えるBCP(事業継続計画)の策定を企業に呼びかけています。今回はBCP策定から具体的な取り組みを行う3社を紹介します。


3・11きっかけに全車両にGPS運行管理システム導入

(株)北海興業 代表取締役 太田 正一氏(福島)

 東日本大震災時、30台のうち1台のドライバーと連絡が取れず、とてつもない不安にかられました。結果無事だったのですが、それをきっかけに、何が起こっても全ドライバーたちと常に連絡を取り合える体制にしなければならないと考え、全車両にGPS運行管理システム・ドライブレコーダーを導入しました。

 リアルタイムで現状把握し、荷主へ車両の到着時間や、交通状況を知らせることができます。操作は簡単で、ドライバーは一般道、高速、荷降、休憩などのボタンを押すだけで、日報作成とも連動します。簡単なメッセージも送信でき、走行中に携帯電話を鳴らさず、お客様の急な予定変更連絡も対応可能です。

 また、走行速度や急ブレーキ急発進などの状況も把握できることから安全運転の意識向上、アイドリング管理やエコドライブにも効果があります。当社の規模からすると高額なシステムですが、ドライバーの安全やお客様の信頼、この先10年、さらに将来の事業継続を考えて必要と、総合的に判断し導入しました。

 蓄積したデータなどは運行管理者中心に検証し、運輸安全に関する教育、環境保全に関する教育、安全衛生に関する教育を、それぞれ計画・実施しています。当社は、長距離は請け負わず、日帰りで戻れる範囲(福島から東京程度まで)としており、それ以上の距離の場合は同業者全国ネットワークの仲間に仕事を依頼します。理由は社員さんの労務管理や働き方を考えたリスク分散の一環です。

 震災もひとつのきっかけですが、それより前に、後継問題を考えた段階で経営指針と連動する各行動計画を策定し、事業継続計画を具体化して行きました。災害が起こらなくても、後継者や若い社員さんがいなければ、事業継続はそもそも不可能です。今、世の中は人手不足と言われていますが当社では問題ありません。当社は社員さんを大切にし、若い方を採用し、育てて来ました。また、高齢の社員がドライバーとして継続するのは困難なため、製造業部門を設けて、退職すること無く、受け入れられるようにしました。その工場では障害者雇用もしています。すべてが同友会での学びと、出会い、地域とのかかわりがきっかけです。

 リスク分散を考え、仙台営業所を開設した結果、当時リーマンショックも乗り切る事が出来ました。2017年国土交通省東北運輸局長賞も受賞させていただきました。

 私は創業者で苦労も多々ありましたが、「まず行動」を信条とし、その都度やるべき事をやったことが、事業継続計画につながったのだと思います。

 今後とも、社員さん、お客様を大切に、行動して参ります。

 

会社を守ることは自分と家族、そして地域の人を守ること

前野段ボール(株) 代表取締役社長 前野 修(三重)

  現在のA精機社長がT社専務調達本部長をされている時、2011年3月11日の東日本大震災がおこりました。今までのマニュアル上のBCPがことごとく機能しなくなり、1次サプライヤーの供給は複雑、多岐のサプライチェーンの現状が掴めず生産が止まるまで対応不可の状態でした。そんな中当社の所属するT社栄豊会(部品以外の設備物流126社)にサプライヤー各社の耐震体制を抜本的に見直す方針が、T社から示されてきたことが本格的・実質的BCPの始まりであったように思います。

 組織をつくり、社員間の連絡体制をつくりました。250坪の倉庫を震度6以上に耐える耐震補強をし、旧配線を全て入れ替え、電源はリフトから取り込めるようにしました。そして、倉庫内のリフトで移動できる小さなスーパーハウスの中の丈夫な金庫の中にパソコン他必要機材や水を保管し、いざという時は対策本部になり、仕事の作業場にもなるようにしました。

 現在は豊田営業所とも専用回線で四日市本社とシステムを結び四日市が被災しても豊田でシステムを動かせる体制になっています。そして役所、消防署、インフラ関係、仕入先、外注先との連絡網を社内に掲示し、自社制作の災害対策ハンドブックをひとりひとりに所持させています。

 その中で一番大切なことが、1人1人への徹底になります。まずは減災、安全な場所に逃げる事を徹底し、それには教育と訓練が一体になることが最重要になります。

 8月17日の盆明けには朝一番でビデオを見て、昼には消火訓練をメインにしたBCPの訓練をしました。

 BCPには終わりがありません。行動を積み重ねる中で、その都度の人への浸透度、あるべき姿が見えてきます。反省し気付くことは山ほどあります。

 ヒト・モノ・カネ・ジカンはかかります。しかしすべての土台が崩れたら終わりです。

 規模や人数を問わず、やれる最低限のことから計画を立てて進めることが大事です。会社は何かあった時、一人ひとりが何をしたらいいかの方向づくりと訓練を重ねて、自分自身の命の大切さをみんなの活動の中で教えていく必要があるのではないでしょうか。

 会社を守ることは自分を守ること、家族を守ること、そして地域の人を守ることにつながる原動力になるというモチベーションが持てるようになればBCP活動も維持継続していけるのではないでしょうか。

 

事業戦略の一環として他県の同業社と「お互い様BC連携」

(株)賀陽技研 代表取締役社長 平松 稔 (岡山)

 今から5年前の2012年12月に当社(株)賀陽技研を立ち上げました。まずは社名を知ってもらうことが当時のテーマでした。そんな時「地震が少ない岡山でBCPに取り組んでいることをブランド化しよう」という勉強会がありました。当時「BCP」という単語すら知らなかった私ですが「ブランド化」という言葉に魅かれて受講したのがきっかけでした。

 ある初夏の勉強会で先生が東日本大震災を例に出して「とにかく製造業の社長さんは、まずは復旧させよう復旧させようとするのです。ですが半年後、復旧したところで、すでにお客様がいなくなっているのです。いかに納品を止めず顧客をなくさないかの方がはるかに重要なのです」とおっしゃいました。これを聴いた瞬間、私は同友会で学んだ労使見解の「いかに環境がきびしくとも、時代の変化に対応して、経営を維持し発展させる責任があります」と重なりました。これが私の中で「社名売り込み」から「BCPへの取り組み」へと変わった瞬間でした。

 (株)賀陽技研のBCP(事業継続計画)では、災害のための計画ではなく、事業戦略の一部として捉えています。ですから、災害に限らず突発的な危機的状況が起こった場合、「いかにして納品を止めず顧客を失わないようにするか」そして、「どうやって雇用を守り続けるか」、この2つが当社の重要なテーマとなっています。その具体的な取り組みとして、他県の同業社と企業連携契約を締結しています。もしどちらかが災害に遭い生産ができなくなった場合、お互いの工場を貸すことで、生産や納品を止めず顧客との付き合いを継続していこうという計画です。この連携を私たちは「お互い様BC連携」と呼んでいます。

 ところが、この連携から得られるものは災害時の救済だけではありません。同業社とはいえ、お互いの得意分野は違うものです。ですから技術協力や仕事の融通など、非常時ではない平常時の連携も可能となるのです。しかも遠隔地域との連携ですので、顧客がかぶりにくいというメリットもあります。

 ところでBCPは単なる計画ですから、事業継続に影響を及ぼすような災害に対し、「本当に有効なのか」という不安が残ります。だからこそ私は、BCPには定期的な演習が必要だと考えています。演習では大地震や大火災などを想定し全社員一丸となって取り組みます。そしてその後の反省会へと続きます。反省会では事業継続計画書の見直しや社内環境の改善についてグループ討議を行うのですが、そこから通常業務の改善につながるアイデアがでることも多々あります。

 最後に今回は当社のBCPについて紹介させていただく機会を設けていただき、ありがとうございました。この記事が少しでも参考になりBCPに取り組む企業が増えることを願っております。

※BCP(事業継続計画)とは 自然災害等の緊急事態に遭遇した場合でも、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続や早期復旧を可能とするために、あらかじめ行うべき活動や事業継続のための手法を決めておく計画のこと。

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