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【調査結果・当日の報告から】駒澤大学経済学部教授 吉田 敬一氏

カテゴリー: シンポジウム

点から線、面の政策へ中小企業のつながりを強化し、まちづくりへ

駒澤大学経済学部教授 吉田 敬一氏

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震災の経験を自社に置き換えて学ぶ

 危機的状況においていかに社長だけでなく社員までが意識と実践力が伴い、臨機応変に対応できるかが今回の論点のひとつだと思います。フレスコキクチでは震災2日目には社長の判断なく各店舗の店長の判断で店を開けて営業しました。次の地震が来るかもしれないという状況で社員も怖いはずの中、社長も動けない状況で社員が動いたのはなぜか。それは理念と経営指針をつくり、つくったら終わりではなく、継続して社員全体を巻き込んで実践している成果であると思います。

 今回被災地同友会から3名の報告がありましたが、この報告を「大変だったね、よくやっているね」で終わらせてはいけません。いつか違う形で企業経営の危機的状況に自分が直面するときがくると考え、今回の報告から何を学ぶのかをしっかりと理解しなければいけません。苦しんでいる人やがんばっている人の成果を自分の会社経営の中身に生かさなければ学びの場とはいえません。

 

中小企業のネットワークを生かす

 

 震災から2年がたち、やっと現状を省みて未来の展望を描けるようになりました。地域のことを考えると、中小企業の強みはネットワークで動いていくことです。もし地域の復旧や復興を考えるとき、これまで自治体は個々の企業に頼り黒字になろうと補助金を1社に集中して与える「点の政策」が広がっていました。しかし、「点の政策」のみでは地域は生かされません。

 行政とも協力しながら、「点の政策」から「線の政策」へと転換していかないといけません。復興事業の新しいステージとして企業の個別的な経営努力の段階からネットワークの経営をしていく。地域の企業が川上分野から川下分野へと移るようにネットワークをつなげ地域をつくっていく。「線の政策」になれば雇用の増大も実際的な課題になってきます。すると安心して住み、働ける地域づくりという「面の政策」が展開されるようになります。

 この「点」から「線」、「線」から「面」の動きを広げることが循環型地域経済づくりにつながります。経営者が危機の状況でどう動けるかは使命感・先見性・決断力の三つで決まります。決断力は危機において社員の命を抱える使命感に基づく企業再構築の出発点です。その使命感にのっとった中小企業の経営が土台になり、企業が地域に根ざすことになります。地域の雇用を、お客様を考えるという基盤ができると、それにふさわしい地域機能や金融機能ができます。

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地域固有の幸せな環境づくり

 

 GNH(グロス・ナショナル・ハピネス、国内総幸福量)というものがありましたが、それとは違うGLH(グロス・ローカル・ハピネス、地域内総幸福量)、つまり地域固有の幸せな環境づくり。地域固有の幸せとはその地域資源を活かした形で生活に必要な財とサービスを提供し、雇用と所得を提供する企業が地域に根ざしていることで生まれます。地域に根ざし発展することで、固有の地域文化・教育機能が出来上がります。

 やはり、今どんな街にしていくのかということがポイントです。そのポイントを現在一生懸命に議論できるのが被災地の同友会です。
被災地において同友会というのは、地域のひとつの灯台であり、フロンティアです。

 そして同友会全体としてはこの三つの同友会が直面した問題を第三者的観点から支援するのに留まらず、危機管理のモデルとして同友会運動に組み入れ、被災地三県以外の同友会が今後の危機に備えるべく対応していくことが大切です。同友会ですら震災の問題に風化が始まることがないよう持続可能な対応と学びの姿勢を続けていく挑戦が必要です。

(記録:中同協事務局 冨永 択馬)

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