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【福島相双地区レポート】1 ~震災後も会勢を維持する福島同友会相双地区を訪ねて

震災をプラスに変える 中小企業家の底力  

 福島同友会相双地区では、会員全員で「震災記録集」を発行することになり、その準備を進めています(11月5日号既報)。福島同友会からの協力要請に応えて現地を訪れ、取材を行った他県の同友会の事務局員から、連載で現地の状況を伝えてもらいます。第1回は大阪同友会・長島健治氏のレポートです。

 

87名会員の絆を実感

 福島同友会相双地区の震災記録集作成にあたり、各地同友会からの支援の一環として訪問活動に参加しました。今まで断片的だった知識が、一気に凝縮して胸に迫ってくる3日間の体験でした。相双地区は、相馬市・南相馬市・相馬郡・双葉郡に所在する会員で構成され、会勢87名。震災後も1人も欠けていません(10月3日現在)。

 郡山駅で豆腐谷事務局長と合流し、まず渡されたのは線量計でした。チェックすると0・24を示しています。地元紙やテレビ番組は、天気予報のように線量情報を報じています。放射線量が日常生活と切り離せない関係になっていることを実感させられました。

 南相馬市へ山越えで移動の途中、飯舘村を通過しました。営業は可、居住は不可の地域で、点在する事務所の明かりと住宅の黒いシルエットが重なり合った風景でした。

 南相馬市に着くと、意外なことに市街地はまったく壊れていません。相双地区の高橋会長((株)北洋舎クリーニング)とお会いして打ち合わせ、相馬市の4件が訪問先に決まりました。

 

訪問した会員企業の特徴点

 (建築・不動産業)この地方の平均的な住宅の敷地面積は100坪、建物は平均50坪。仮設住宅の2Kの間取りは窮屈であろう。震災直後から家を失った人が次々と来社、物件がすぐ決まった後はお断りの対応に追われた。建築の需要が増え、社員を6名増やした。

 (ギフトショップ)通行止めで3日間戻れなかった自宅は、あと100メートルのところで津波を免れていた。震災後は法事の引き出物のギフト商品が激減。ボランティアの人から「相馬の名物は?」と問われたことをヒントに、自社商品「相馬ふるさとパック」を考えた。震災を通じて、それまで考えなかった「地域」を意識することができた。失うものもあったがプラスも大きい。

 (ビルメン・防虫業)会社前の水田まで、津波とがれきが押し寄せた。流されてきた人を救助した。会社近くの空き地が遺体の仮置き場となり、一時は100体も置かれていた。震災後は本業が激減した代わりに、除染が大きな仕事になり、被災した漁師など雇用を拡大した。観光名所だった松川浦は1メートル沈下し、満潮時に道路が冠水するほどになった。

 (税理士事務所)双葉町・大熊町などの顧問先が影響を受けた。見る限りでは、自分で努力する人のところにはいい話が舞い込み、「駄目だ」と嘆く人はそれっきり。2分化していくようだ。

 

訪問を通じて

 「震災がプラス」との言葉が印象的でした。地域の強みや連携など、それまで見えなかったものが見えました。ギフト商品の激減など、震災で起きた劇的なニーズの変化は、震災がなくても時代とともに変わっていくものだったのかも知れません。

 私がお会いしたのは、大変厳しい状況にあるにもかかわらず前向きな人ばかりでした。もはや「がんばろう東北」ではなく、東北以外こそ、がんばらなくてはならないと痛感しました。

(大阪同友会事務局 長島 健治)

「中小企業家しんぶん」 2012年 11月 15日号より

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