「企業存続・地域再生ための行動指針」を全会員に送付
福島同友会では、3月31日に同友会震災復興指針書として「企業存続・地域再生ための行動指針」を発表し、全会員に送りました。
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同友会震災復興指針書「企業存続・地域再生ための行動指針」全文
同友会震災復興指針書 ■企業存続・地域再生ための行動指針■
2011.3.31
福島県中小企業家同友会
震災、津波、原子力災害が押し寄せるという大変厳しい環境に置かれています。まさしく、これまで培ってきた各社の「経営理念」が、地域やお客様から試される局面だといえます。
経営者としてあらゆる手段を講じて、会社・社員・お客様を守ることが、地域の復興への一番の近道となります。会員の皆さんの叡智を結集して、この難局に対して熱く・かつ冷静に対応し、ふくしまの復興への道筋を切り拓いていきましょう!
◇まずは企業存続のための行動を今すぐとろう!
*社員に対する対応・・・・まずは社員への安心感、そして助け合いを!
第一に安否確認。落ち着いたら、今後の方針を説明し、給料など社員の生活と将来への不安を無くすように努め、全社一丸体制を確立しましょう。給与や今後の仕事の保証など、我々経営者以上に不安に思っている社員も少なくありません。社員とその家族の健康状態を把握し、ライフラインが完全に復旧していない場合、その復旧まで経営者を中心に社員全体での助け合いをしましょう。
*お客様・取引先に対する対応・・・・情報発信をして、理解と信頼関係の構築を!
電話・FAX・メール・ホームページなどを駆使して正確な情報発信を行いましょう。実態を発信することで、風評被害を避けることができます。復興への強い経営意欲を発信し、復興に向けた相互協力支援、信頼関係の確立をはかるよう努力しましょう。場合によっては支払猶予などのお願いが必要な場合も考えられますが、そうした点での理解を得られるかどうかの基礎は情報発信と信頼関係にあります。
*金融機関に対する対応・・・・当面の資金繰りに全力をあげ、かつ返済計画も考慮!
・震災による直接の影響はもとより、今後の企業活動における影響のほうが大きく、その長期化が懸念されます。当面の営業ができないことを前提とした資金の確保を最優先で行いましょう。様々な措置が講じられていますので、まずは取引銀行や、県・市町村の経営相談窓口に即、電話連絡し、資金の確保についての対策をとって下さい。
・また、当面の資金確保は当然として、借入に関しては「これまでの運転・設備資金」と「災害に伴う事業活動の復旧資金」(さらに、従来の業務を再開させるための「設備復旧資金・補填運転資金」と、企業活動を震災前までの水準に回復させるための「つなぎ運転資金」に分けられます)とに分けて考え、それぞれの性格・用途に合わせた資金計画を慎重に検討して、極力無理のない借り入れを行うことが望まれます。
・特に可能な限り、融資の書き換え等によって「毎月の返済金額を極力減らす」・・・・返済期間をできるだけ長くする等・・・・ことが大切です。
*被災の被害状況の記録を忘れずに・・・・客観的に証明できる資料の保存に心がけましょう!
被災に対する補償が様々な点でとられる見込みです。特に今回の震災においては、「地震」そのものの被害に加え、「津波」による被害、さらには原発による「放射能被害」やそれに伴う「風評被害」など、これまでに経験したことの無い広範囲なものになることが予想されます。
国の政策の中で、今後どんな補償がどの程度、どんなその範囲や内容で行われるかは分かりませんが、そんな状況に備えて、自社の被害状況・・・・直接のみならず間接的な影響も含めて・・・・を客観的に証明できるような記録を保つように心がけましょう。
阪神大震災を経験した兵庫同友会でも、「被害の状況の記録を残しておく・・・・会社の被害状況を写真等で「記録」を残しておく。※公的な災害認定や復興資金の確保の際などに必要となる。案外、復旧(片づけ)やお客さんの状況確認などに手いっぱいで、後で困ることになる。」と教訓化しています。
◇自社の存在意義を発揮し、地域再生に向けての情報発信を進めよう!・・・・e.doyuも活用
*今こそ自社の存在意義=経営理念を発揮する時
地域の中でどのように役に立つ仕事を進めるのか?、という経営理念に掲げられている会社の存在意義が問われている場面です。燃料の調達、資材の調達などの困難な課題はありますが、全社員の力を結集し、お客様への情報発信を進め、すぐできる事・ちょっと時間がかかる事などに分けて、できることから対応していきましょう。
*情報発信&会員の皆さん同士の援け合いを
同友会会員の皆さん同士の信頼できるネットワークを大いに活用しましょう。
e.doyuの掲示板には、「0111復興・復旧対応 会員情報」のメニューを設けています。e.doyuは会員の皆さんが自由に書き込むことのできる情報発信のしくみです。会員企業の皆さんができる事をどんどんアピールしていただき、お互いに補い合いながら地域の再生に向けて挑戦していきましょう!
◇社員の雇用を守るための対策・・・・労使見解の精神を活かし、地域の暮らしを守ろう!
私たち同友会では、「労使見解」の精神のもとで、社員の雇用と生活の守り手、地域社会を支え守り続けてきた「地域経済と雇用と守り手」としての誇り・中小企業家魂を大切にしています。昨年制定された「中小企業憲章」に沿って、地域の守り手としての役割を貫くことが求められていることは言うまでもありません。地域の雇用を維持することは、地域の人々の生活を支え、結果的に各社の需要を支えることになります。
経営者としての責任において、社員の雇用を確保するための取り組みを進めましょう。
*社員と共に「仕事づくり」を
地域の生活者としての視点から、社員と共に自社のお役立ちをどう発揮させるのか、について知恵を絞りましょう。私たち同友会では、「労使見解」の精神のもとで、社員の雇用と地域の生活の守り手として力を尽くすことを使命とする企業づくりをめざしています。地域の皆さんの「困りごと」に応える仕事を創造して参りましょう。
*当面の課題として・・保険料の納付延長、雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の活用を
・社会保険料・労度保険保険料の納付期限が延長されます
対象地域に所在地を有する事業所等については、延長期間中は一律に社会保険料の口座振替を停止することになっています。延長期限は「災害のやんだ日から2ヵ月以内の日」に定められますが、今後、被災者の状況に十分配慮して検討していくこととして、後日決定となる見込みです。
・在職のまま社員に失業給付を受けさせる方法(雇用保険失業給付の特別措置)直接被害
今回の災害により直接被害(建物倒壊、機械の破損、原発の避難指示区域)を受け、事業が休止になった場合には、ハローワークに休業証明書(通常の離職票と同じ)の提出により、従業員については、雇用保険から失業給付(雇用保険の基本手当)を受け取ることができます。
災害救助法の指定地域(福島県内は全域)の事業所が今回の災害により直接被害(建物倒壊、機械の破損、原発の避難指示区域)を受け、事業が休止になった場合には、事業再開後の再雇用が予定されている場合でも失業給付を受け取ることができます。ハローワークに離職証明書を提出して下さい。
※いずれの場合も、雇用保険に6か月以上加入しているなどの要件を満たす方が対象になります。またこの特別措置制度を利用した場合は、離職前の雇用保険の被保険者であった期間には通算されません。
・助成金を使って休業手当てを助成し、従業員の雇用を維持する方法
(雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金を使う)間接被害
今回の災害により間接被害(交通手段の途絶で出勤できない、地震以後にお客様が減った、材料が確保できない等・・・・)を受け、従業員を休ませる場合には、従業員に休業手当(給与額の60%程度)を支払い、支払った休業手当の9割(解雇者を出した場合は8割)については国から雇用調整助成金として事業主に支給されます。
・休業手当・・・・労働基準法の規定(6割以上の支払義務)の適用の有無について
今回の災害被害を直接に受けた場合の休業は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事項」には該当しません。直接的な被害を受けていない場合の休業については、「取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの機関、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し判断する必要がある」(厚生労働省Q&A第1版より)とされています。
・解雇に関する規定について震災特例はありません
被災地であってもそれぞれの会社の実態に即して判断されるものでありますから、「被災地であれば、解雇は認められる」とか「解雇しやすい」というようなことではありません。
また、今回の震災を理由として労働基準法で定められた解雇予告、解雇制限などの規定が免除となるわけでもありません。解雇予告を行うことなど、一般的な法律な規定が適用されますので、解雇に関する手続きにあたっては慎重に対応して下さい。
解雇予告手当の支払いを要しない規定(労働基準法第19条第1項但書および第20条第1項但書)の適用には、労働基準監督署への「除外認定申請書」が必要です。
※本日現在、原発20キロ圏の避難指示区域については適用除外が認められていますが、30キロ圏の屋内退避区域についての適用については「本省で検討中」との回答です。
同友会では、屋内退避地域の実態に即して、すみやかに予告手当支払の除外を適用するように要請しています。
◇地域を守るのは私たち中小企業!・・・・仲間と共に、社員と共に励まし合って行動しよう!
誰しもが大変に困難な状況に置かれている今こそ、「ホンモノ」であるかどうかが試されています。経営指針・・・・経営理念・方針・計画といった事はもちろん、それぞれの経営者や社員の皆さんの考え方や行動一つ一つが、「何のために」・「誰のために」という土台の上に投影されているといえます。
今こそ、これまで以上に社員の皆さん、地域の皆さんと一体となって各社の復興に全力を尽くし、お客様・地域のための仕事に邁進しましょう! 困った時は、地区役員や事務局まで相談して下さい!
そして、同友会を通して、そんな想いを持つ仲間同士で、元気を出し合い、知恵を共有し合い、新しい”ふくしま”づくりの先頭に立って行こうではありませんか!!