ニュース - シリーズ【絆―復興をめざして】

【絆―復興をめざして】第29回 私の生き方を変えた震災の記録

 (有)美花 代表取締役 神長倉(かなくら) 豊隆(福島)

 震災発生から5年目の節目に、福島同友会から発行された『逆境を乗り越える福島の中小企業家たち』(2017年2月24日発行・執筆は2016年秋)より、会員企業の復興の軌跡を掲載してきました。最終回は神長倉氏の報告です。


 東日本大震災が起こってから、早や5年半が過ぎ、人々から現実に起こった大震災ももはや過去の事例になってしまったのかもしれない。2016年はリオでのオリンピックが開催され、日本の選手団の活躍に人々は酔いしれ、4年後の東京でのさらなる活躍を願い、国民は楽しみをオリンピックに見いだそうとしています。特に福島県ではオリンピックの1会場として名乗りを上げ、それまでに復興を加速化し復興を内外にアピールして行きたいと必死であります。被災地双葉郡の現状はどうでしょうか?

 6年後の浪江町への帰還をめざし、すぐには帰れないとする町民とはかい離がある中でも、復興は始めなければという強い姿勢でインフラや除染と取り組んでいます。この取り組みは双葉郡全体が一致したように町の復興が大事と皆同じように進んでいるのです。そして、年間20ミリシーベルトの基準を採用し、帰還に向けてのまちづくりがなされようとしています。言わば、町民にとっては放射線の管理区域の適応にほかならないのです。

まちづくりNPO理事長として

 安全の基準は緊急時と変えられ、年間100ミリシーベルトまで安全とした国の基準は国民に犠牲を強いるものでした。私自身は帰還して町民のためにできれば活動をしていきたいと考えています。しかし、私の家族や息子や孫には相当の期間が過ぎ安全安心の町が保証された時までは近づかないでほしいと考えています。

 私は今、まちづくりNPO新町なみえの理事長として活動をしています。ふるさとの復興を願いつつも、避難された皆さんの生活再建や暮らしにおける問題や課題に1つひとつ向き合い、課題の解決のために何ができるのかを考える日々を送りながらいます。昨年より始めた移動支援は、多くの高齢者を抱える二本松市の仮設住宅や借り上げ住宅をサポートしながら活動をしています。

 多くの高齢者は、便の悪い仮設住宅や借上げ住宅に居住し、今でも病院や買物に不便を来す現状でもあり、復興が進む中、若い人たちと離れて暮らす老人たちが多くいます。仮設や借り上げ住宅からの住み替えも進みつつある中で、そうした老人世帯が取り残されつつあるのです。私たちNPOは、孤立や孤独死を無くし、高齢者が生き生きと暮らせるようにサポートをしていくつもりです。

 浪江町を始め、今後復興が本格的になる双葉町や大熊町など、抱える問題や課題は山ほどありますが、復興に向かい歩き出すのはそう遠くないはずです。私たちは、双葉郡の将来像を夢に見ながら一歩一歩と歩みを進めて行かねばなりません。

 私は帰還して、60年の歩みをしていた花屋の経歴を生かし花の栽培を手掛けたいと思っています。ほとんど帰る人が居ない中で、難しい経営が余儀なくされるかもしれませんが、今、農業の復興に取り組んでいくとしたら、風評被害の少ない花の栽培こそが求められるのです。私に農業の経験はありませんが、少なくても花の良し悪しは分かります。そんな経験を生かし、取り組んでいきたいと考えています。

是が非でもふるさとの復興を

 私は今、郡山市に居住し二本松市のNPOの事務所に毎日通勤しています。いずれは現在の職は若い人に譲りたいと考えており、そう遠くないうちに浪江町に帰還したいと思っています。同友会の仲間やふるさとの仲間が待っている相双地区への帰還は私自身の励みでもあり、ともにふるさとの復興や発展のために役だつ存在になっていければと考えています。

 私たちは、今回の事故や大震災を経験し、失うものもたくさんありましたが、それと同じぐらい得るものもたくさんありました。自然災害はどこにでもあることが予想されますが、今回は原子力事故が重なる複合災害でした。その対応の難しさは誰もが経験したことのないものでした。今後そのすべてが明らかになり、その時の対応について論じられるのはかなり時間が経過した後のことだと思います。

 しかしながら、そこに暮らしがあり、10万人を超える避難者が出てしまったことが事実であり、歴史の中の汚点でもあります。そんな事実の中で、葛藤しながらもふるさとを守って行きたいという仲間や同士がいるのも同友会であり、まさに地域に根ざした企業づくりを進める会の役割でもあります。そうした企業風土や経営指針づくりなどはふるさと再生の大きな力になるのではと思っています。

 私たちは今回の災害で多くの人々や仲間から大きな支援をいただきました。私たちはこの恩にお応えしなければなりません。是が非でもふるさとの復興を成し遂げることが一番だと考えています。相双地域はもちろん元気にがんばっていますが、これから復興本番に入る私たちもがんばってまいります。

 私たちが体験したことは、多くの方に共有していただくことが大事だと思います。機会があれば、体験や経験を多くの人たちの前にお話しすることもしなければと思いつつ筆を置きたいと思います。

(有)美花 会社概要

創業:1952年7月1日
従業員数:6名(被災当時)
事業内容:生花小売業
所在地:郡山市横塚5丁目2-12

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